CASE STUDY 23
PLACE

アイチ金属

OVERVIEW

技術事例

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優美な階段のメタル。

本案件は、とにかくその優美さが巨大な円形空間の中に際立つ極めて印象的なケースです。まず建物がコンクリート素材の壁面、床が特徴的なマーブル模様の大理石と、素材にも徹底したこだわりが感じられます。そこに、漆黒でありながら精緻な意匠が施された金属フレームと、白い石材の踏み板がはまった階段が添えられた様は圧巻です。 アイチ金属が手がけたのはこの階段そのものですが、特徴的なことがいくつかあります。中でも、優美な曲線を描くフレームの形状は特筆すべきものです。難易度もまた同様です。大きくカーブしている内径と外径とは、当然のことながらサイズが異なりますが、踏み板をのせる場所を位置固定する必要があるため、設置場所に少しでもズレがあれば、階段を使用する人間が平衡感覚を失ってしまい使い物にならなくなります。失敗できない精度検査の緊張感はなかなか経験できないレベルでした。

整合性と緊張感

本案件に限らず、ではありますが、こちらが果たすべき品質には毎回手を抜くことなどできません。我々は部材を作る企業ですが、社会における安全性そのものを加工しているのです。だからこそ、精度との整合性をとっていくことが求められるのです。さらに、工場内では複数のプロジェクトが走っているわけですから、工程管理はそのまま社会における安全性管理ということになります。 特にアイチ金属では、手作業の工程が多く、職人の理解力が常に求められます。むろん、工程上ではさまざまな機械を使いますが、仕上がりすべてを機械に任せることはできません。これは、今後AIが進化したとしてもまだまだ人間によるところが大きくなると確信できる部分でもあります。部材ひとつずつ組み上げていく時の工場内での緊張感、そして現場施工による仕上げと調整、検査に品質管理、これらすべての整合性にアイチ金属の品質があるのです。

施工で変わる存在意義

今回の階段は施工時の難易度もまた相当なものでした。階段のサイズと重量、そしてカーブしていることにおける精度出しもまた、現場施工における極めて重要な作業となったからです。設置完了時の達成感は筆舌に尽くし難いものがありました。建築があらゆる技術や素材の集合体で絶妙なバランスを保持しているものであることを再確認いたしました。 私たちの工場内においては、どのような品物でもさまざまな部材にすぎません。それらは工程を重ねていくごとに存在感をまし、触れることにも最新の注意を払うようになります。しかし、建築に用いられて初めて完成するわけですから、我々の工場内での工程をすべて終えたとしても、それだけでは永遠に完成しないのです。実はそこにこそ、我々の責任があると考えます。現場施工を我々が手がけているのは、確かに現場において微調整をしながら納品したいという想いの現れでもあります。しかし本質は、空間そのものを体感しながら施工し「完成」を体験することではじめて、発注から納品までの施主、建築、加工のすべて完全に理解するために欠かせないプロセスだということです。こうして、我々は常に磨き上げられていくのです。