CASE STUDY 21
PLACE

アイチ金属

OVERVIEW

技術事例

アートピースとメタル。

アートピースは不思議です。たとえば、それがあるからと言って何かが便利になるわけではなく、治るわけでもない。言ってみれば、プロダクトのような機能的なメリットがありません。しかし、そのアートピースを目にしたことで、今まで考えていた世界の見え方が一変するような経験を得る時があります。心の在り方が変わるというか、考え方そのものが変わってしまうといったことなのでしょう。これは、アートのもつ役割が「機能」ではなく「情報」に特化したものであるという側面がなせる技ではないかと考えています。アートピースの中には、一人のアーティストがたどり着いた膨大な「情報」があり、個人の知性を通した世界や社会の視点などが含まれています。それが、作品を通して私たちに届いた時、受けてである我々の思考と合わさって一種の化学反応のように融合し新しい情報になるのかもしれません。 一方、普段のアイチ金属の仕事は、まず「機能」が求められます。当然事故が起きたり、誰かが傷つくようなことがあってはならないのです。さらには、設計者やデザイナーの意図を正確かつ深く表現できるかどうかが求められます。人が考えなくても使用できるようにデザインされた意図を崩さないといった、機能を重視した仕上がりが求められます。まさに、対極にあるともいえるアートピース。今回は、その一部の制作を請け負うという、大変貴重な機会となりました。

「情報」を支える精度

本件は、名古屋市内において著名なギャラリーである「Gallery Nao Masaki」からの依頼であり、作品を制作するアーティストは金沢を拠点に活躍するガラス作家の辻和美氏。空間ディレクターは「Gallery Nao Masaki」の正木なお氏です。設置されたのは名古屋駅前のミッドランドスクエアで、期間は2020年のクリスマスイベント期間中でした。アイチ金属は、ツリーの支柱の製作と、枝、鉢部分の溶接と塗装を手掛けました。今回製作したのは、400枚ものガラスのお皿が吊り下げられたクリスマスツリーの木の部分です。お皿だけで合計すると1tほどの重量となります。これを、しっかり支えられる強度が幹の部分になければそもそもこの作品が成立しません。一方で、無骨な仕上げになってしまえば、アートワーク全体の完成度が下がります。 アートピース製作に触れて理解できたことは、まずアートに関わる方々は「機能的にも優れている」ということを具現化する発想と経験を持っているということです。これは、我々が日常的に触れてきたものであり相性は抜群でした。幹の仕上げはホワイトカラーであり、表面の美しさを保つために溶射の技術を用いています。別の企業が部材製作を実施した枝部分との最後の組み合わせは、現場での仕上げになります。通常の現場と同じく、現場取付 / 施工部のスタッフが一つずつ組み上げて完成となりました。

存在感の不思議

イベント期間中には、アイチ金属からも会場が近いこともあり、弊社スタッフも何度も足を運ばせていただきました。大変多くの人々が訪れ、写真をとっている姿は大変印象的でした。展示された器は、すべてが完売。大変意義深いイベントとなりました。今回の作品のメインは器、ツリー本体はいわば脇役です。そのスタンスは、我々が普段仕事をし、納品しているすべての金属部材と同じものでありながら、アートピースという存在によって金属部材の存在そのもののいつもとは違うステージに立っているかのような不思議な印象を得ました。 しっかりとした品質で応えること。案件としての理解を正確かつより深いところで理解すること。普段の仕事に共通することばかりでありながら、全く新しい体験価値をもたらしてくれたのが本案件です。一般の人が、この作品を目的に金属部材を一緒に眺めている姿には、私たちの普段の仕事に対する一つのご褒美のように感じられたこともまた、関係者の皆様に深く感謝申し上げるところです。