アイチ金属
案件事例
古くからある神社仏閣や建築物の中に、銅が用いられた屋根や支柱をもったものがあります。これらは建設当初は美しい銅色の極彩色だったと推察できますが、時代を得て緑青を発生した姿へと変化していくことでより独特で魅力的な風格を漂わせるようになります。銅の経年変化の大きな魅力です。 緑青は銅成分に発生する錆です。基本的には無害です。昔は緑青=有毒とされたこともありましたが、成分的に無害なものであることが示されるようになりました。同時に、緑青が皮膜となり金属を腐食から守る効果があることもわかっています。そして、緑青が発生した銅がもたらす表情に注目が集まり、現代においては銅に緑青を発生させたものを竣工時から用いることができるようになりました。
夢の話ではありますが
当案件では、エントランスの巨大なパーテーション部分の製作でした。トタン素材にVerometal® Copperを用いてコーティングした上で、緑青を生じさせる加飾処理を行なったアートウォールです。同じ仕上がり部材をインターホンの操作部分に用いており、建物内に軽快な印象を与えています。金属の存在感はそのままに、美しい緑青の色味がダイナミックに楽しめます。さらにインターホン前の手すりには、内側のみVerometal® Copperコーティングし緑青を生じさせました。じっくりと深い飴色になる銅の表情も楽しめます。 Verometal®を使用することで大面積でも安定した品質で提供することができます。むろん、均一な仕上がりと、丁寧な加飾処理を大面積で実現するのは熟練の技が必要です。少しでも塗りムラが生じると、均一な緑青の生成となりません。大面積になればなるほどVeroMetall®コーティングや加飾の技術が必要であり、逆に言うなば、”意図的なムラ”を作りたいのであれば、全体をコントロールし切る技術が必要なのです。
エッセンス
緑青の存在感は抜群ですが、それゆえにインテリアデザインに対する深い知識が必要となります。たとえば、当案件では、アートウォール中央にロゴが配置されています。当然、ロゴは視認性が重要です。全体がロゴの引き立て役としての役割を果たしていることも重要です。そこで、ロゴ周辺の緑青発生を若干抑えながら、金属で加工されたロゴを設置しています。 ライティングなどを設定することで、空間全体のデザイン性と、ロゴの視認性、緑青の存在感を生かしたサインボードとしての役割が際立ってきます。こうした技術はデザインサイドのなせる技。我々、部材供給者としては、その意図を理解して仕上げに転換していくことが重要です。緑青は美しく個性もたっぷりの優れた存在です。だからこその扱いの妙に、毎回考えさせられる存在でもあります。