CASE STUDY 58
PLACE

愛知

OVERVIEW

技術

1
「走る」と「暮らす」を、
ひとつの住まいで

クルマ好きのための、さりげないメタルの工夫

クラシックカーレース「Le Mans Classic 2023」にも出場されたお施主様は、プロのレーサーにも引けを取らない腕前を持ち、日常の中で6台のポルシェとの時間を心から楽しまれています。 名古屋市内に建てられたご自宅は、RC造3階建て。 暮らしとガレージが違和感なく溶け合うよう、細部にまでこだわった住まいです。 設計は建築家・光崎敏正氏。私たちアイチ金属も、その想いに共感し、一部に携わらせていただきました。 クルマを愛する方の暮らしに寄り添う、ささやかだけれど確かなメタルの工夫をかたちにしています。

ガレージの“顔”となる大きな引き戸

住まいのファサードには、大きな横引きの自動ドアが据えられています。 ここは、日々の生活とクルマとの時間をつなぐ場所。施主様からは、いくつかのご希望をいただきました。 • クルマに見合う、落ち着きのある外観 • スムーズで静かな開閉 • 安心感のある防犯性 • 外壁との一体感を損なわない控えめな質感 私たちは、そうしたご要望を丁寧に伺いながら、素材の選定と細かな納まりの検討を進めていきました。

メタルの質感を活かしつつ、目立ちすぎない存在に

採用されたのは、低光沢のリン酸処理を施した金属パネルです。 金属らしい重厚感を保ちながら、光の反射を抑えた穏やかな表情に仕上げられます。 耐候性や防錆性にも優れており、屋外で長く使われる場所にも適しています。 華やかさを狙うのではなく、あくまで建物の一部として静かに馴染むこと。 素材の存在が前に出すぎないよう、控えめなバランスを大切にしました。

目立たない部分こそ、丁寧に

この大きな引き戸は一見シンプルに見えますが、重さのある金属パネルを静かに動かすためには、見えないところに工夫が必要でした。 • 強度を保ちつつ、静かに動く吊り構造はスラブ下からのクリアランスが低いため駆動梁地も一から設計し、自社にて製作しました。また本体はハニカム構造とし強度と軽量化を実現しました。 • 建築家の意図を崩さないための納まりの調整 • 長期的な安心感につながる防犯仕様 それぞれの検討には、設計者の意図を汲み取りながら、実際の製作や施工でどう形にするかという視点が欠かせませんでした。 建築家の方、お施主様、そして私たち製作チームとで、何度も打ち合わせを重ねる中で、少しずつ答えが見えてきたように思います。

素材としてのメタルができること

完成した邸宅は、愛車とともに過ごす日常を、無理なく暮らしの中に取り入れた空間になっています。 施主様からは「思っていた通りの仕上がりです」と、あたたかいお言葉もいただきました。 今回のようなプロジェクトに関わらせていただくたびに、私たちは金属という素材の可能性をあらためて感じます。 目立たなくても、暮らしの中で静かに寄り添う金属のあり方を、これからも丁寧に模索していきたいと思っています。 ガレージのある暮らしを特集する雑誌「GarageLife」にも取り上げていただきました。 誌面ではより詳しくご紹介いただいておりますので、機会がありましたらご覧いただけますと幸いです。